介護現場で使える“呼吸法”と間合いの考え方|その場で効くコツと声かけ


結論:現場での安定は、①自分を落ち着かせる呼吸②相手と“同調”する呼吸③安全な間合い(距離・角度・高さ)の順で作ると早い。
「言い合い」や「押し引き」を避け、ケガゼロでケアを継続するための実用メモです。

安全上の注意
・胸痛、強い息切れ、めまいがあれば中止し、医療的判断を優先。
・閉塞性肺疾患など呼吸器疾患がある方には、無理な息止め・過呼吸を誘発する指導はしない
・本稿は一般的ガイド。施設方針・法令・研修に従って運用してください。

1|まずは自分を落ち着かせる呼吸(30〜60秒)

  • 4–6呼吸鼻4秒で吸う口6秒で吐く × 6〜8回(肩はストン、腹360°に空気)
  • 生理的ため息(速効):鼻で軽く吸う→もう1回ちょい吸い足し→長く吐く × 1〜3回
  • ボックス呼吸吸4止4吐4止4 × 3周(めまいがあれば止める)
コツ:「声は低め・ゆっくり・短文」。呼吸が落ちると声も落ちる=非対立の合図になる。

2|相手と“同調”する呼吸(コレギュレーション)

相手の胸・肩の上下や呼気のリズムを観察し、最初は同じテンポ少しだけ長い吐く息に誘導。

  1. 3呼吸だけ同じテンポで呼吸(視線は柔らかく、正面から睨まない)
  2. 次の3呼吸で、こちらは吐く息だけ+1〜2秒長く
  3. 落ち着いたら短文で指示:「いっしょに すって… はいて…

※触れずに誘導。触れる必要がある介助は、予告と同意を取ってから。

3|“間合い”の基本(距離・角度・高さ)

項目 目安 ねらい
距離 腕1本+半歩 掴まれにくい/急接近を察知しやすい
角度 斜め45°半身 圧迫感を下げつつ、即退避できる
高さ 目線は合わせる/上から見下ろさない 非対立・安心感
退路 出口/コール位置を常に認識 離脱の準備
  • 手の形:胸前で手のひらを見せる(開いた手=攻撃意思ナシ)/肘は軽く曲げて体の近く。
  • 配置:壁際に追い込まない&追い込まれない。テーブルで“線”を作るのは可。

4|シーン別の“呼吸×間合い×声かけ”テンプレ

入浴前(不安・拒否が出やすい)

  • 自分に4–6呼吸×3 → 距離は腕1本+半歩 → 斜め45°
  • 声かけ:「いっしょに すって… はいて… 落ち着いたら、足から少しだけ洗いましょう」

排泄介助(羞恥・急ぎで高ぶりやすい)

  • 同調呼吸×3 →「今はここで待ちます。準備ができたら合図ください
  • 近づく時は正面NG。斜めから、予告して最小限に触れる。

帰宅願望(歩き回り)

  • 歩調と呼吸を合わせる→徐々に歩幅と呼気を小さく
  • 声かけ:「15時に○○へ行きましょう。今はここでひと休みしましょう」

5|よくあるNGと置き換え

  • ×早口・大声 → 低い声で短文(主語は少なく)
  • ×真正面で詰める → 斜め45°・腕1本+半歩
  • ×「ダメです」だけ → 手は下ろしてください。安心になります」
  • ×触れて止めるから始める → 呼吸と距離で落ち着き→必要最小限の接触

6|1分でできる“共同呼吸”の導入スクリプト

  1. 合図:「いっしょに息を合わせます。苦しくなったら手で合図してください」
  2. 呼吸:すって…(2〜3) はいて……(4〜6) × 4周
  3. 締め:「ありがとうございます。今のペースを保って進めます

7|環境で“呼吸と間合い”を助ける

  • 光:まぶしさを下げ、暖色に。見通しを作る。
  • 音:テレビ・アラーム・反響を下げる。声は一人だけが担当。
  • 動線:角や狭所で対面しない。座位で同じ方向を見る配置に。

8|今日の2分アクション

  1. 自分用に4–6呼吸×6回を練習。タイマーを登録。
  2. 担当フロアで斜め45°に立てる位置を2か所確認。
  3. 声かけフレーズを3つだけ声出し(「手は下ろしてください…」等)。

9|60秒ショート台本(教育用)

  • 0–10秒:結論「呼吸→同調→間合いで、無理なく落ち着く」
  • 10–25秒:4–6呼吸デモ(肩ストン、腹360°)
  • 25–40秒:同調→吐く息+1〜2秒の誘導
  • 40–55秒:距離=腕1本+半歩/斜め45°/手のひらオープン
  • 55–60秒:今日の2分アクションを字幕で

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