介護士が身につけたい“護身術”の考え方|ケガゼロで終える12原則


最重要:本記事は介護現場の安全向上を目的にした一般情報です。
・身体拘束は禁止が原則。物理的制止は最終手段で、施設方針と法令に必ず従ってください。
・危険を感じたら「離脱と支援要請」が最優先。
・医学的/法的助言の代替ではありません。疑義は所属施設・専門家へ。

結論:護身術=「勝つ」じゃなく無事に離れる

介護士の“護身”は ①予防(環境・予兆) → ②非対立コミュニケーション③離脱(距離確保・退避)の3本柱。
目的はケガゼロでケア継続、これ一択。

1|予兆サインを早く掴む(イエロー/レッド)

レベル サイン例 即対応の方針
イエロー 早口・ため息・落ち着きなく歩く/握り拳/距離が近づく 距離を腕1本ぶん確保/声を低めゆっくりに/退路を意識
レッド 怒鳴る・物を掴む/投げる動作・接触が増える 即座に離脱→支援要請(コール)/遮蔽物で線を作る

2|距離と位置取り(ノンバーバルの護身)

  • 距離:腕1本ぶん+半歩。相手の真正面ではなく斜め45°に。
  • 手:胸の前で開いた手を見せる(攻撃意図がない合図)。
  • 足:半身でスタンスを作り、いつでも後ろへ半歩下がれる。
  • 退路:常に背後の出口/ナースコール/仲間の位置を把握。

NG:両手をポケット/壁際で相手を追い詰める/鍵のかかる部屋で1対1

3|非対立コミュニケーション(言い換えテンプレ)

声と姿勢:低め・ゆっくり・短文。視線は穏やかに、顎は上げない。
  • 共感+要件:「今、不安ですよね。安全のため少し距離をとります。落ち着いたら続けましょう。」
  • 選択肢:「ここで座る/廊下を歩く、どちらが安心ですか?」
  • 境界線:「叩かれるのは困ります。私は離れますが近くにいます。」
  • 否定→指示に変換:「ダメ」→「手は下ろしてください。安心になります。」

4|環境で守る(“迷路”を“道”に)

  • 動線:扉前や狭所でのケアは避ける。角には見通しを。
  • 撤去:掴まれやすい物・投げやすい小物は置かない。
  • 表示:行き先サインをシンプルに(色/矢印/写真)。
  • 照明・音:まぶしさ/反響音を減らし刺激を下げる。

5|チームで動く(合図と役割)

  • 合言葉:「赤いファイルお願いします」=応援要請、など事前に統一。
  • 二人介助の原則:話す役と環境調整役を分ける。入れ替えは合図して。
  • 記録共有:トリガー(時間/場面/人)と効いた声かけを共有ノートへ。

6|ケース別の“考え方”(物理は最終手段)

  • 被害妄想・物盗られ妄想:否定より安心を先に。「探すお手伝いをします→一緒に確認」
  • 帰宅願望:時間・場所の見通しを提供。「15時にここで」「写真/地図」で安心を作る
  • 拒否強いケア:分割・順番変更・別の人交代・時間を置く

※制止や抑制は施設方針と法令に従い、訓練を受けた方法のみ。未習得の技法は行わない。

7|インシデント後:記録とリカバリー

  • ABC(前兆→行動→結果)やSOAPで簡潔に記録、24h以内に共有。
  • ディブリーフ:当事者の感情ケア/再発防止の環境・声かけ見直し。
  • 身体チェック:目立たない打撲やストレス反応も翌日再確認。

8|学習と訓練(おすすめの方向性)

  • 暴力予防・拡大防止(デエスカレーション)研修の受講。
  • 法・施設ポリシーのアップデート確認(身体拘束適正化など)。
  • シミュレーション:退避ライン/合言葉/役割交代のロールプレイ。

よくあるNG

  • 挑発的な言葉・表情(皮肉、ため息、睨む)
  • 閉鎖空間での1対1対応/背後の退路ゼロ
  • 「正しいか間違いか」で押し切る(安全>正しさ)

まとめ:今日の2分アクション

  1. 明日の担当フロアで退避ルート遮蔽物を1カ所ずつ確認
  2. 合言葉を1つ決めて掲示(例:「赤いファイル」=応援要請)
  3. 言い換えフレーズを3つ声出し練習(ゆっくり・低め・短文)

※危険が迫る状況では、ためらわずに離脱・支援要請・通報。あなたの安全が最優先です。

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